大学の学費の高さが日本経済を停滞させている

2023年4月28日これいらない,経済知っ得

先日もちょっと書いたが、欧米の億万長者は我が子の大学の学費を出していないことが多い。
日本では、あえてそうしている人はなかなか少ない。それには理由もある。

欧米の大学の学費を対物価で考えると、日本の大学の学費はベラボウに高い。国公立でもだ。

だから、「アルバイトで学費を稼いでいたら学業がおろそかになる」と多くの親が考える。それは確かにそうだ。
私は19で家出をして1日インスタントラーメン二袋とかリンゴ1個とかで肉体労働をして暮らしていて、2年弱ぶらぶらしてやっぱり大学に入りたくなった時もほとんど一文なしだった。受験料がもったいないので志望学部1発勝負、試験の1週間前までバイトをしていた。

受かってから最初の年は大学の貸与奨学金で学費が賄えたが、スケジュールミスで1科目だけ試験を受けるのを忘れてしまい、2年目からは奨学金が借りられなくなった。

そこからはより高給を求めてアルバイトを転々としたり掛け持ちして昼夜働いたりしたが、歴史系の講義があまりに非生産的でやる気をなくした上にバイトで体力も使い果たし、勉強する気力体力が完全に失せてしまった。
来年こそ履修し直して頑張ろうと学費を払い、また授業に出なくなり、という地獄の悪循環が続き、ついにいったん中退した。

アメリカの大学などは、毎日レポートを書かせる教授もいたりして学業は日本と比べ物にならないほどハードだが、学費はまた比べ物にならないほど日本より安い。

再入学して哲学系に転向してからは良い先生たちに恵まれたので、日本の大学の中身が空っぽとは決して言わないが、平均するとスカスカになってしまうのは悲しい事実だと思っている。これは構造的な問題を解決しないとどうにもならない。

ということで、日本で貧乏人が大学に行こうと思ったら、学業を卒なくこなして(天才である必要は全然ない、真面目でさえあればいい)奨学金をせしめるか、今なら十代でも投資やYouTubeで稼いでいる人たちはいるのでそうやってコスパの良い方法で学費を稼ぐか(ただし投資もアフィリエイトも時間を相応にかけて勉強しないとなかなか1銭も稼げない)。
なんとなればクラファンも不可能ではない。まあ良い時代になったもんだ。

私の学生だった頃の母校は「二部」つまり夜間部があって、実際には夕方の5限〜7限(21時終了)が授業で、学部の事務所で優先的に雇ってくれて、授業がある日は早退できるようにもなっていた。今は二文てなくなったらしい、志望生徒も減ったんだろうか、卒業学部が消えるとちょっとクルものがあるね。

で、親にお金がある家庭は、学歴社会に遅れをとらないようすんなり卒業してほしいと思って学費を出してやり、アルバイトを極力しなくていいように仕送りをすることになる。
しかし実際のところは、親のすねかじりの大学生のほとんどは遊び呆けて勉強などしていない。レポートは誰かに書いてもらい、出席票を友達に託して教室を抜け出し、あるいはハナから出席を取らない「楽勝科目」を選択し、ほとんど何も身につかないまま卒業してしまう。それができてしまうのが日本の大学。
そして、親の血と汗の結晶の仕送りは、つぼ八に消えていく。

つまり、
1つ。親に金銭面でぶら下がりまくりなので経済観念がちっとも育たない。金融リテラシーもなければゼロから稼ぎだす知恵もなければ苦労して稼いだ金をビジネスや投資で失う失策も経験しないまま卒業し、就活という奴隷市に身売りする。日本経済を活性化しリードする人材はどこで育つんかいなということになる。少なくとも大学ではない。

就職してから会社の金で留学して経営学を学びに行くのも結構だが、じゃあ大学は何のためにあったんかいということだ。奴隷になる前の思い出作りに遊びまくるのに4年も必要なのか。

2つ。苦労して学費を稼いでないので有り難みも薄く、平気で授業をサボり、卒業重視で楽勝科目ばかり選ぶので、仮に真面目に勉強しても専門性もへったくれもなくなる。
学術的にも人手不足になり、大学で学んだ知識を社会に役立て経済発展にも寄与するのも、大学院を出た人たちや長く大学に残っている研究者くらいになってしまう構図がある。
多くの「大学生」は、大学の学業で学んだことを日本経済にも自分の人生にもほとんど役立てていない。そもそも学業をしていないので何も学んでない。

3つ。高過ぎる学費に収入を注ぎ込まされた結果、親もなかなか投資に手を出せない。このことが日本人の一般家庭のポートフォリオが欧米に比べて悲惨であることの原因の一端を担っている。財産がちっとも増えないのが日本の特徴だ。長らく物価がバカみたいに低迷していたので目減りした実感がないかもしれないが、私の学生時代に比べても実は「えーっ」というほど大学の学費はさらに上がっている。
そして大学の学費の高さとそれを親が援助しなければいけない風潮が、少子化に拍車をかけていることも、決して否定できない。大学教授の友人もそれを指摘していた。
学費が安ければ、世間の親御さんはもうちっと金持ちになれたんじゃないか。学費が安ければ、子育てしちゃろうという男女ももうちっと増えたんじゃないか。

大学の研究が日本にも世界にも有益であることは大いに肯定するし、それには研究費がかかることもわかるし、優秀な研究者にも報酬をケチるべきではないことも賛成。だが、日本の研究者が高給を得ているという印象もまたないのだが、実際どうなのだ。教えてください(いつか調べるけど)。
あの高額な学費は一体、どこに使われているのか。
今や欧米の何分の一という物価・物価上昇率の日本で、学費だけ何倍も高いわりに研究成果や分野の数が飛び抜けて何倍もすごいわけでないという謎。

ほんと、なんで?