例えばわざとサボることで収入を増やす仕事

2022年7月9日これいらない,サスティナブル,富の知

そういう仕事は歴史的にも現在にも、まだまだ世界中にある。

アダム・スミスに言わせれば、役所の公務員の仕事自体がそうやって税金を市場にばらまくために存在するということになるのかもしれない。が、役所の空気も若い人たちやプロ意識の高い人を中心にとても前向きなところもあるし、もしかしたらいい方向に世代交代していくかもしれない。「サボってなんぼ」の精神で足を引っ張る勢力はいまだに確実に存在するが、昔(私の育った昭和)のように一概に役所を悪者にすること自体が日本では時代遅れとなっていく可能性もある。


ともあれ話はタイトルのような特定の、わざと無駄をして経費を搾り取る仕事。

道徳的かどうかをさておいても、少なくとも「世の中のための仕事」かといったらほとんど誰もそうだとは言わないだろう、やってる本人含めて。

具体的には、政府が特別に国民に何かを配布するとする。交付金でもいいし物品でもいい。もちろん国家予算の中から100%費用が払われる。

理想的には、最低限のコストで、物品なら十分な品質のものを、最短期間で配布するべきである。

しかし、そこで
「コストが余計にかかってもどうせそれは国が出すのだから、この機会にできるだけ搾り取ってやらねば」
という輩が必ず出てくる。

これが中小企業が経費を持つ仕事なら、社員はそのせいで自分の会社が潰れるかもしれないので、派手な無駄はできない。が、たまに経費に色をつけて請求するくらいのことはする人がいるだろう。

大企業の仕事になると、もう、「経費を馬鹿正直に最低限に抑えるなどありえない」と考える人も、末端になるほどけっこう増えてくる。

そしてこれが公金になると、「存在理由すらない会社が突然現れる」レベルの怪奇現象が起こる。

その会社を経由することによって生じる「中間経費」は、本来なら丸々不必要なものであることが多い。非常に多い。もうこれは紀元前からある腐敗の構図なのだが、21世紀になってもなくならない。

名目上は、政府が直接やるよりも、ノウハウのある組織が代行したほうがスムーズなので、結果的に人的経費を節約しているのなんのかんの言っているのだろうがぶっちゃけ中間搾取以外の何物でもない。

書類仕事から記録・照合・連絡・手配、ほとんどをIT化することも容易な時代になっていて人材も溢れているのに、有能な機材と優秀な人材を使う代わりに、わざと面倒な手順と手抜きに慣れた人々をかき集めてきたりする。

しかも、そうした不必要な中間会社は、1時間で終わる仕事を1日かけ、1日でできる仕事を1ヶ月かけ、1人で楽にこなせる仕事を10人でやって、できる限りコストをかけることにだけ知恵を使う。(これでも決して誇張じゃないと思う。数百万でできる仕事を数億〜十数億とかかけているのだから)

私も、20代のバイト時代には、そうした仕事に携わったこともある。おかげで2つの仕事を掛け持ち、大学の学費を稼がせてもらえたとも言える。

「ほら、世の中のためになってるじゃん」と言うのだろうか、これも。

その「ブルシット・ジョブ」がなかったら、私は倍の時間を費やし数倍の労働をして学費を稼がねばならなかったかもしれない。もしかしたらもっと早く大学を一時中退せねばならなかったか、無理をして入院したかもしれない。しかしそれが何だと言うのだろう。

こんな理由で「ブルシット・ジョブ」が正当化されるのであれば、腹が減ったら堂々と警察の目の前で泥棒してもいいと言ってるのと同じだ。

大学は結局、翌年に中退し、2年後に再入学した。別に1年早く中退したからといって私は死にもしなかったし不幸にもならなかった。

むしろ、余計な楽な仕事があったために余計な収入を得て、授業にもたいして出られないまま無駄に1学年過ごして無駄な学費を払ったということだったのかもしれない。

まあそんなことはいい。

例えば今、私はひとりで娘を育てなければならないが、「公金を無駄遣いするだけの超ラクな仕事があるんだけど」と持ちかけられて、やるかといったらやらない。

この歳になると、なんでも経験しとけみたいな気にはならず、逆に、残された人生をいかに美しく生きるかということにしか興味がなくなっている。

正当な交付金はもちろんありがたく頂戴する。が、政府に限らず、人にあえて不当な出費をさせてまで利益を得ようという「努力」に対して、仮に生きるために必要だったとしてももうヤル気がわかない。

別に、孔子(の弟子)が喜ぶような道徳的な生き方をしたいわけでもないし、損してでも馬鹿正直に生きたいというほどでもないし、税金は一銭も無駄にしたくないという潔癖症でもない(そんなこと言ったら全国の役所を解体再編成しなければならなくなるがそんなことを求めるつもりもない。むしろ、田舎の小中学校をどんどん減らしていながら無駄な大学に補助金を払い続ける行政にこそ反対の立場だ)。

なんというか、モルタルにかじりついて生きていたような若い頃はともかく、今この歳で、公金を搾り取るために不要な仕事を幻出させるような妖術にエネルギーを使いたくない気分。そのエネルギーがあったら、大手を振って鮮やかにお金を稼ぎ出すシステムを構築するための勉強をしたり、アイデアを発掘したりしたい。

国家のような「お金持ち」から詐欺的に搾り取る仕事は、できるだけ目立たないようにそれをやってなければならないし、バレそうになったらヒヤヒヤし、いざその仕事や絞り口がなくなったらそれでおしまい。また一から野良犬のように探さないといけない(よっぽど裏世界を牛耳ってるとかでなければ)。

でも、「鮮やかに稼げて真にWIN-WINな仕事(よくある無責任な勧誘報酬系とかじゃなくてね)」を一生に1つでも2つでも作り出したり見つけたりすれば、そのノウハウをさらに売ることもできて、文章に覚えがあればプロセスを本にもできて、そこから新しい知見と出会い結びつき、けっこうな富を生み出し続けることも可能になる。

もともと若い頃も「プロ意識」に惹かれるタチだったので、前者のようなバブル仕事を自分から探したことはなかったけど。

人生後半戦になって完全に、個人的な文芸工芸芸術芸能か、真にWIN-WINな仕事にしか興味なくなったのよね。