【猫話 4】子猫から始まる新世紀

2022年1月27日z-日の徒然,メンタル,

前回までの話を経て、「家の中に猫のいない生活」は半月ほどで終わりを告げ、再び猫のいる暮らしが始まった。しかも子猫。

しかしまあ最初は大変だった。

なにせ目ヤニが固まって両目が開かなくなっていた生後1ヶ月の子猫。母猫が舐めてやっても追っつかなかったんだろうなと思ったらその通り。

とにかく最初の最初は外で膝に抱いてノンアルコールのウェットシートで目ヤニを拭いて、ようやく目が開く。が、しばらくするとまた目ヤニがたまってくる。初日は、1時間もするとまた瞼が貼り付くので固まらないうちに拭き取るの繰り返し。寝てる間は起こさないように、起きたらまた「見えニャイ」と鳴き始めるので拭いてやる。

保護した時というのは、この「起きたら見えニャイ状態」の時だったのかもしれない。お母さん猫はちゃんとケアしていたのだろう。でも子猫2匹いるうちの片方がこんなではどのみち母猫も大変だから、家に入れてよかったのだと思う。

母猫はその後もほぼ毎日姿を見せていたが、数日後に遠出しているところを見かけた。30メートル先くらいの角を曲がっていくところで、声をかけたら私に気づいて振り返ったその顔に、もう1方の子猫をくわえていたように見えなくもなかったが実際はほとんど確認できなかった。

あとでわかったことだが、お隣(といっても1キロ弱離れている)さんの家のテラスでけっこうな数の猫が集まっていて、ウチに出入りしていた雄猫(家に入れた子猫のおそらく父猫)がバッチリそこにいた。父猫がいたのだから母猫もお隣さんに出入りしていた可能性は大いにある。

遠出する母猫を見送ったあの日以来、もう1匹の子猫をずっと探したのだがついに見つからなかった。母猫は時々見かけたし、毎日出していたご飯はいつも食べてあった。都合のいい願望だとわかっているが、お隣さんにあの日、子猫をくわえていったのだと信じるしかない。その儚い願いに少し救いとなる話を、たまたま別のご近所さんで耳にした。

この辺に住み着いている猫は、従来の居場所で出産したのち、ほかの猫の数が多かったりして居心地わるい場合は子猫を連れてよその(たいていは、まだ猫のいない)家に移住するらしい。そのご近所さんのところにも、そのお宅のお隣さんで見たことのある母猫が先日、子猫を連れてきたと思ったら子猫だけ置いてどこかに行ってしまったそうで。室内で犬を飼っているので子猫を引き取るわけにもいかずそのまま様子を見ていたら、また戻ってきて再び子猫を連れてどこかに移っていったとのこと。

私はあれから、もう1匹の子を探し歩きながら、一緒に家に入れておけばと後になって何度も思った。けれど、あの時は1匹だけ先に緊急避難が精一杯だった。妻が生きていたら、「仔猫は全員いっぺんに保護しないとダメよ!」と怒られていただろう。「1匹が精一杯」でない暮らし、常に心の余裕のある暮らしをすることの大切さよ。

読む人のためには楽しい話だけ書いたほうがいいのかもしれないとも思ったけれど。
これから猫の保護をする人たちの参考と、猫関係なく「時間と心に余裕のある暮らし」がなぜ大事かという根幹テーマのために、思い出して胸を痛めながら事実を書いた。